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「万葉挽歌」に見る古代社会の死生観

目次

数多くの挽歌が収録されている日本最古の和歌集『万葉集』

歌や音楽は喜怒哀楽の表現方法の一つで、それは国や民族、宗教、年齢、身分を問わず、全人類に共通する普遍的な行為である。たとえば、日本に現存する最古の和歌集『万葉集』(7世紀後半~8世紀、全20巻)には、天皇や貴族、防人など様々な階層の人たちの歌が収録されていますが、そこにも感情表現は認められ、とりわけ死者を悼んだり、死をテーマにしたものは「挽歌」と呼ばれています。葬儀の後、棺を載せた車をお墓まで運ぶ、いわゆる「野辺送り」の際に、その車を挽くときに歌う歌――それが「挽歌」の原義となります。

古代社会における3つの墓前儀礼とは

國學院大學文学部日本文学科特別専任教授の上野誠氏は、万葉文化論の立場から歴史学・民俗学・考古学などの研究を応用した『万葉集』の新しい読み方を提案されている、この分野の第一人者です(上野教授の公式ホームページ=http://www.manyou.jp/)。上野教授によると、『万葉集』には267首の挽歌があり、それらの歌を読み解くことで、当時の人々がどんな気持ちで死者に接していたかがよくわかるそうです。たとえば、天皇や貴族など当時の上層階級の人々は、「肉体(肉)と霊魂(霊)を二つに分けて、肉体から霊魂が離れ、元に戻らなくなった状態(いわゆる「遊離魂」)を『死』と捉えていた」と話し、お墓文化についても「肉体はいつか滅んでしまうが、霊魂は死後も存在し、子孫たちをずっと見守っていくという考えが前提にあって、お墓をつくる文化が定着した」と説明します。また埋葬後も「墓前儀礼」と言って、お墓の前で①死者から一時も離れず、生前と同じように仕えること(食事や水、お酒の提供など)、②最高の礼を表すため、お腹を大地に付ける匍匐礼をすること、③死者への哀悼の念を表すため、泣くこと――以上3つを重んじていたそうです。

奈良・京都方面へお出かけの際はぜひ……

『万葉集』の舞台である奈良・京都周辺には、歌や歌人と縁の深い場所に歌碑が建立されています(写真上=持統天皇の歌を詠んだ万葉歌碑、橿原市)。また、石舞台古墳(奈良県明日香村)は蘇我馬子(島大臣)の墓とも言われており、そこに墓前儀礼が行なわれたであろう仮設の建物があったことも『日本書紀』に記述が見られます。奈良・京都方面へお出かけの際は、上野教授の著書『万葉挽歌のこころ 夢と死の古代学』(角川選書)を片手に、古墳や歌碑巡りをされてはいかがでしょうか。